「争族」を防ぐ!相続紛争の予防法・対処法

目次

相続とは

 相続とは、ある人が亡くなった時に、その財産(権利義務)が法律に従って生前の持ち主(被相続人)から他の人(相続人)へ移ることを指します。

 その財産(権利義務)を遺産と呼びます。
 遺産が誰にどのように引き継がれるか、その決め方は2つしかありません。
 遺言遺産分割です。
 亡くなった方が決めた場合が遺言、ご遺族が決める場合が遺産分割です。

 このため、①対象財産=亡くなった方の財産=遺産が何かと、②引き継ぐ方=相続人/受遺者が誰かが、最も基本的な要素となります。 
 注意して頂きたいのは、遺産分割には、構造的に紛争性が潜在していることです。というのも、相続人らが、遺産という限られたパイを分け合うという構造を有するからです。「自分の得は他人の損、他人の得は自分の損」というなかでは、相続人間のちょっとしたズレが紛争の原因になってしまうのです。

 では「争族」などと呼ばれる相続紛争を予防するにはどうすればよいのでしょうか。また、相続で紛争化してしまったらどうやって解決していけばよいのでしょうか。
 対策を考えるために、原因から考えます。相続紛争の原因を整理してみましょう。

相続紛争の7類型

 相続紛争は、概ね以下のとおり、7つに分類できます。

  • 遺言がない場合=遺産分割
    • ①遺産の分け方が決まらない
    • ②遺産の範囲について合意できない
    • ③使途不明金があり合意に至らない
    • ④寄与分(生前の介護等)
    • ⑤特別受益(生前贈与等)
  • 遺言がある場合
    • ⑥遺言無効
    • ⑦遺留分侵害額請求

予防策

 紛争類型毎の予防策は、以下のとおりです。

  • ①遺産の分け方が決まらない場合
    • →適切な遺言を作成すれば分け方で揉めることはなくなります。
  • ②遺産の範囲について合意できない
    • 遺言生前の財産管理において、漏れのない財産目録(財産リスト)を作って遺しておくことで対応できます。
  • ③使途不明金があり合意に至らない
    • 適切な生前の財産管理により対応できます。
  • ④寄与分(生前の介護等)
    • 遺言を作成すれば対応できます。
  • ⑤特別受益(生前贈与等)
    • 遺言で持戻し免除の意思表示を明確化する、適切な生前の財産管理により、リスクを下げられます。 
  • ⑥遺言無効
    • →公証人・弁護士が遺言能力を確認する公正証書遺言を作成する(当然ながら、遺言能力がなければ作成できません。)
  • ⑦遺留分侵害額請求
    • →請求されない内容の遺言にする+戦略的な財産管理(生前贈与等)(遺留分額が少なくなるようにする)

このように、「適切な遺言」と、「適切な生前の財産管理」の2つがなされていれば、相続紛争は未然に防げます。

紛争化してしまった場合

 対策が不十分で紛争化してしまった場合は、まずは協議(話し合い)を行います。
 協議が難しい場合は裁判所での調停を行い、それでもだめなら訴訟・審判で解決せざるを得なくなります。
 解決まで数年を要することもあります。

終わりに

 中途半端な対策の結果、紛争が長期化することも少なくありません。必要かつ十分な対策を行うことが必要です。
 相続については、理論上は、必ず紛争を防げます。
 ご家族の関係性や、資産構成、あるいは家業の状況等の要因によっては難しい場合もありますが、それでも紛争化リスクを最小化する方法はあります。
 遺言を作成すること、そして適切な財産管理を行うこと、これらが重要だといわれる理由・背景の理解の一助になれば嬉しいです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

弁護士・税理士。
虎ノ門法律経済事務所上野支店代表(2012年〜)
https://ueno.t-leo.com/lawyers/
ステラ税務会計事務所代表(2020年〜)
https://stella-tax.jp/about/
企業法務と相続、不動産案件に注力。
依頼者第一をモットーに、依頼者に安心を・企業に成長を届けられるよう、法務と税務の両面からのサポートを行う。

目次